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GAFAの何が問題なの?規制の動きは?〜コーヒーブレイクしながらわかる

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GAFAのなにが問題になっているの?〜国境をまたがる課税

GAFAとは、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(アマゾン)の頭文字をとったものです。

GAFAをめぐる問題は、大きく三つに分けることができます。

すなわち、国境を越える課税の問題、プライバシーの保護の問題、公正な競争を妨げているという疑いの3点です。

まず、国境を越える課税の問題についてです。

企業にかかる法人税は、原則として本社や支店、工場など、物理的な拠点がある場合に課税されます。しかしGAFAなどインターネット企業は、そうした拠点がなくても、インターネットを通じて国境を越えて音楽や映像の配信、広告などのサービスを提供して巨額の利益を稼ぐことができます。消費者のいる国の法人税収が減り、税金逃れなのではないか、との批判が、ヨーロッパ諸国を中心になされています。

消費者がいる国の法人税の税収が減るという問題だけではなく、その国で競合する伝統的なビジネスを展開する事業者が、税負担が異なるため、対等な競争を行えないという問題もあります。経済協力開発機構(OECD)の試算によると、GAFAは税率の低い国やタックスヘイブンで利益を計上することなどで10〜24兆円もの税負担を回避しているといい、欧州委員会の調査によると、IT企業の税負担率は9.5%で、伝統的ビジネスの23.2%の半分以下に過ぎないとのことです。こうした競争条件の違いが、実店舗をもつ小売業がアマゾンにシェアを奪われる理由のひとつということもできるでしょう。

そこで、G20が主導して、経済協力開発機構がGAFAなどへの課税の新しいルールの案を作成し、提示しました。これらの企業の営業利益を「通常の利益」と「超過する利益」に分け、超過する利益の一部に対して、消費者が住む国も課税できるという仕組みです。例えば、営業利益率が10%を超過する場合に、10%を超える部分が超過する利益で、超過する利益の20%に各国が課税でします。営業利益率が20%の企業の場合、20%から10%を引いた10%が超過する利益で、2%が、各国での売り上げに応じて各国に配分されることになります。

この案は、もともとはターゲティング広告や、音楽配信などのITサービス提供者に課税することを想定したものですが、GAFAの母国であるアメリカは、GAFAだけを狙い撃ちするのは許さないとし、ITサービスだけを対象とする案は受け入れられないとしました。そのため、ルイビトンやナイキ、ユニクロ、ソニーのように、ブランドなど無形資産によって利益を上げている消費者向け物販にも対象が広げられることとなりました。またアメリカは、このルールに基づいて納税するかどうかは、それぞれの企業が選択できるようにすべき、との案を出しましたが、これでは制度が骨抜きにされてしまうため、ヨーロッパ側は強く反対しました。

新たな課税案は2020年中にも最終合意がなされる予定でしたが、GAFAの母国であるアメリカと、デジタルサービスの巨大市場であるヨーロッパの間で意見が対立して合意に至れず、結論は2021年の半ばに先送りされることになりました。


GAFAのなにが問題になっているの?〜プライバシーの保護

GAFAは、世界の人々についての情報を大量に持っています。利用者がGoogleで検索をすれば、そのキーワードが記録されて、その人の関心のある事項がどんどん記録されていきます。地図アプリを使えば位置情報が蓄積されていきますし、Amazonで買い物をすれば、その人が何を買ったのかという情報はもちろんのこと、住所や電話番号、クレジットカードといった情報も登録されます。

こうした個人のプライバシーに属する情報は、ターゲティング広告、つまり、利用者の関心のある広告の配信などに用いられるのですが、自分の知らないところで流出し、不正に利用されるのではないかとの不安が高まっています。

実際、2018年3月に、Facebookの持つ最大8700万人分の個人情報が、イギリスのコンサルティング会社によって不正に取得されたことが大問題となり、ネット上の個人情報保護のための規制強化が必要との気運が大いに高まりました。Facebookはその後も数度、個人情報流出の問題が発覚しています。

具体的な規制の動きとしては、2018年5月にEUがGDPR一般データ保護規則を施行しました。GDPRでは、個人情報を取得するときには、目的を説明して、明確な同意を得る必要があることや、個人からのデータ削除要求への対処、データ漏洩時の監督当局への通知などが規定されました。IPアドレスやクッキーも個人情報とみなされるとされました。最近ウェブサイトを閲覧しているとクッキー使用の同意を求めるポップアップが立ち上がることが増えましたが、GDPRで明記されたことがきっかけになっています。違反すれば最大で全世界での年間売上高の4%か2000万ユーロの高い方の制裁金が科されるとされました。

2019年1月にGoogleは、個人情報の利用目的を解説しているページが分散しており確認しづらいことや、個人情報の利用の目的別に同意を得ていないことがGDPRの規定に違反しているとして、5000万ユーロ(約62億円)の巨額の制裁金を命じられています。

2020年1月には、アメリカ・カルフォルニア州で消費者プライバシー条例(CCPA)が施行されました。カルフォルニア州の個人や世帯の情報を有する企業に、消費者からの情報開示請求、データ削除の請求、個人情報の第三者への売却停止請求に応じること、消費者がそうした権利を行使したときに、差別しないことなどが義務付けられ、違反1件ごとに最大2500ドル、故意の違反の場合は最大7500ドルの罰則も設けられました。

日本でも、2020年6月に個人情報保護法の改正が公布されました。この改正により、個人情報漏洩時の報告の義務付け、個人が個人情報の利用停止などを請求できる範囲の拡大、第三者提供記録の開示請求権の新設、立ち入り検査などの対象に外国事業者を追加、法人への罰金の上限を1億円に引き上げ、などが行われます。

GAFAの側でも、不祥事が発生すれば企業イメージを大きく傷つけることもあって、プライバシーの保護に取り組み始めています。なかでも、広告収入に依存しないアップルは積極的であり、例えば、個々のiPhoneやiPadに割り振られたID、IDFAを広告主に通知する機能を、従来はユーザーが通知の拒否を申し出るオプトアウト方式だったのを、ユーザーが承諾しない限り通知がなされないオプトイン方式に2021年中に変更するとしています。

グーグルは、広告配信業者などがユーザーのブラウザに送り込んでいるサードパーティ・クッキーを2022年初頭までに廃止する方針を公表しています。

一方で、過去に大規模な個人情報流出問題を起こしているFacebookは、AppleのIDFAのオプトインへの変更の動きについて、「アプリ運営会社の広告収入を50%以上減らすことになる」と批判するなど、やや消極的である模様です。


GAFAのなにが問題になっているの?〜公正な競争

Googleは、検索エンジンやデジタル広告、モバイルOS、地図など様々な分野で圧倒的なシェアを握っていますが、高い・マーケットシェアに基づく優越的な地位を乱用しているのではないかとの警戒が高まっています。

2020年10月のアメリカ下院の司法委員会反トラスト小委員会の調査報告書によると、Googleは、地域情報サイトのYelpなどから情報の提供を受けてGoogle Localというサービスを行なっていたのですが、2010年にGoogleが新たにYelpと競合するサービスを開始したときに、YelpがYelp独自のコンテンツを取り除くようGoogleに要求したところ、Googleは、そのためにはGoogleの検索結果の全てからYelpを取り除くことになる、と答えたとしています。そしてGoogleは、YelpがユーザーのアクセスをGoogle検索に依存しており、検索結果から外れることを許容できないことを知っていたに違いなく、検索での独占的地位を武器としている、と問題視しました。

報告書は、Googleは「できるだけ速やかに目的地へ連れて行くことがミッションである」と謳っているにも関わらず、実際には壁で囲まれた庭に閉じ込めようとしている、と痛烈に批判しています。

Appleについては、2020年10月のアメリカ下院司法委員会の調査報告書は、App Storeを通じてアプリが販売されるときにアップルが徴収する30%の手数料を問題視しています。

報告書によると、アプリの開発者は、アプリの販売はAppleとGoogleが独占的に行なっているので手数料に競争原理が働いておらず、30%もの手数料は消費者の負担を増加し、アプリ開発者の技術革新も阻害している、と主張しているとしています。

人気のシューティングゲーム「フォートナイト」を開発するエピック・ゲームズ社は、プレイヤーにAppleを通じて課金するか、エピックに直接支払うかを選択できるようにし、エピックに直接支払う場合に20%ディスカウントする仕組みを導入したところ、AppleはApp Storeの規約違反であるとして、フォートナイトをApp Storeから削除しました。

Eメールアプリのヘイやプロトンメールも、Appleより、App Storeのみで課金をするよう求められ、応じなければApp Storeから削除すると言われたとのことで、両者は、やむなくそれに応じました。ワードプレスは、無料アプリであるにもかかわらず、Appleから「課金システムを利用しなければアップデートをできなくする」と言われたとのことです。ただし、SNSで批判がなされたことなどから、Appleはのちにこの要求を取り下げています。

報告書は、App Storeでの検索についても問題視しています。音楽アプリのスポティファイは、長くキーワード「music」で検索順位1位だったにもかかわらず、2016年6月にApple MusicがApp Storeに参加すると、すぐにApple Musicが1位となり、2018年には、上位8位の全てをAppleのアプリが占めスポティファイは23位に落ちたとのことです。書籍読み上げアプリのAudiobooks.comも、キーワードAudiobooksで2年間1位だったにもかかわらず、AppleがApple Booksを始めると、すぐに検索順位が落ちました。これによりAudiobooks.comのダウンロード数は25%も減少したとのことです。

Facebookは、事業範囲はGoogleのように広くはないものの、SNSの分野では圧倒的で、独占的な地位を有しています。そのFacebookについて、2020年10月のアメリカ下院司法委員会の調査報告書は、facebookの「買収するか、真似するか、抹殺するか」という強権的な姿勢を問題視しています。

報告書によると、写真共有アプリのInstagramが急成長するなかで、FacebookはInstagramを真似たアプリの開発を進める一方で、Instagramに対して買収提案を行いました。Instagramの創業者であるシストロム氏は、もしFacebookが類似のアプリの開発を進めていなければ、買収提案を真面目に考えることはなかっただろうと述べています。また、シストロム氏は、Facebookの顧問に対し、もし買収提案にNOと言えばザッカーバーグ氏は「デストロイ・モード」に入るかと尋ねたところ、顧問は「おそらくそうだ」といい、「ザッカーバーグ氏はインスタグラムをクラッシュさせてしまうのが一番いい、という結論を出すだろう」と述べたといいます。

報告書は、facebookが実際に「真似」をして「抹殺」した事例として写真共有アプリのSnapchatのケースを挙げています。Snapchatは、2013年に、ザッカーバーグ氏からの30億ドルでの買収提案を拒否したところ、24時間で投稿が消えるStoriesの機能が真似され、Instagramにほとんど同じ機能で、名称も同じStoriesで搭載されました。そしてそれから一年もしないうちにInstagram StoriesのユーザーはSnapchatを上回り、2018年には2倍となった、としています。

Amazonについて、反トラスト小委員会報告書は、Amazonに出店して商品を販売している230万の小売事業者のうち、37%が全売り上げをAmazonに依存しているため、Amazonはこれら小売事業者に対し非常に優位な立場にあるとしています。Amazonは、表向きは出店者を「partners」と呼びつつ、社内では「internal competitors」と呼んで、自社で開発して販売する商品のライバルと位置付けているとのことで、出店者に対する優位な立場を使って、出店者の販売データを使い売れ筋を把握して自社製品を開発したり、出店者の仕入れ先から直接仕入れて販売を行なったりしている、としています。

GAFAに対する規制や提訴の動き

ヨーロッパでは、2017年に欧州委員会がGoogleに対し、検索結果で自社の商品価格比較サイト「グーグル・ショッピング」を優先したことがEU競争法に違反するとして、24億ユーロの制裁金を科しました。2018年には、スマホ向けOSアンドロイドに自社製アプリを抱き合わせたことについて43億ユーロの制裁金支払いを命じ、2019年には、Googleから掲載する広告の掲載を受けているサイトに対し競合サービスの広告の掲載を禁じるなどの条件を課したとして、15億ユーロの制裁金を科しました。

そして2020年12月15日、欧州委員会は、巨大IT企業がヨーロッパでビジネスを行う上での厳格なルールを定めた2つの法案を発表しました。

ひとつはデジタルサービス法(DSA)で、これにより事業者は、ユーザーが違法なコンテンツを掲載した時に、その表示を制限するなどの措置をとることが求められます。またターゲティング広告では、ユーザーに対し利用するデータを開示し、利用されない選択肢を提供することなどが義務付けられます。

もうひとつはデジタルマーケット法(DMA)で、これによって、例えばショッピングモールに参加する小売事業者の販売データを利用して自社製品を開発することや、小売事業者の仕入れ先から直接仕入れて低価格で販売することなどは禁じられます。また、検索結果で自社サービスを優先表示することや、自社OSにアプリを抱き合わせることなども規制の対象となります。違反した時は、世界での年間売り上げの10%という巨額の罰金が科される可能性があります。

なお、これらの法案は、これからEU議会や加盟国で審議されることになり、また、各方面からの反発も予想されるので、成立には数年を要すると考えられます。

アメリカでは、2020年10月に、Google検索を初期設定とする契約をAppleと締結するなどして、検索広告市場での独占を維持・拡大した疑いで提訴がなされました。また12月16日には、広告の売買での独占的地位を使って広告主と媒体に不利な条件を押し付けたり、競合他社を排除したとの疑いで、翌17日には、Google検索で自社のサービスを上位にし、ExpediaやYelp等を下位に表示した疑いで、提訴がなされています。

facebookについては、アメリカの連邦取引委員会が2020年12月9日に、facebookはInstagramやWhatsAppなどがSNS分野での独占への脅威となるため、それらを排除するために買収したとし、InstagramやWhatsAppの売却が必要として提訴しました。

また、同じ日に48の州・地域の司法長官が、Facebookはユーザーのデータを収集することでユーザーが他のサービスに移りにくくしており、消費者、広告主、競合企業の利益を害したとして提訴しています。

反トラスト法関連の訴訟は長期にわたる傾向にあり、これらの訴訟も結審まで数年を要するとみられます。よって、GAFAの分割などの大きな動きが今後すぐに行われることはないでしょう。

また、トランプ前大統領はSNS企業が民主党寄りであるとの不満をいだいていたので、大統領の交代により、GAFAに対する風当たりが一時的に弱まる可能性もあります。

とはいえ、民主党の中にはGAFAの分割を主張する強硬派もおり、10月6日の下院・反トラスト・小委員会の報告書も民主党議員が主導して取りまとめられました。共和党から民主党へ政権が移っても、GAFAに対する逆風は吹き続けるものと考えられます。


Some clues...

省略(動画本編でご覧ください)

 

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