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日経225オプション【前編】基本的仕組み&価格の決まり方〜コーヒーブレイクしながらわかる

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1. 日経225オプションの基本的な仕組み

そもそも日経225とは何でしょうか。日経22ゴは、東京証券取引所の一部市場に上場する株式のうち、日本経済新聞社が選んだ225銘柄の株価をもとに算出される株価指数です。同じく東証一部上場の全銘柄を対象として算出されるTOPIXに比べると、ユニクロのファーストリテイリングなど一部の株価に影響され過ぎるなど欠点もあるのですが、日本の株式市場の状況を示す指数として最も広く使われています。

日経225オプションは、ひとことでいえば、あらかじめ決められている日に日経225を買う権利または売る権利を取引することです。

あらかじめ決められた日とは毎月の第2金曜日です。買う権利のことはコール、売る権利のことはプットと言います。つまりオプション取引にはコールを買う、コールを売る、プットを買う、プットを売るの4とおりがあります。後編でオプションのいろいろな取引手法をご紹介しますが、それらの手法はいずれもこの4通りの取引を組み合わせて行います。

もう少し詳しく言うと、毎月第2金曜日に日経22ゴの構成銘柄それぞれが最初に取引された価格から算出された指数をSQと言いますが、コールでは、SQが権利行使価格を上回った場合に自動的に権利行使が行われて、SQと権利行使価格との差額が、オプションの売り手から買い手へ支払われます。これを差金決済と言います。SQが権利行使価格を下回った場合は権利は消滅します。

わかりにくいかもしれないので、簡単な例で説明してみましょう

日経225が22000円の時に、権利行使価格が23000円のコールオプションを50円で購入したとします。日経225が1500円上昇してSQが23500円になった場合は、SQが権利行使価格を上回った分を1000倍した金額を受け取ることになりますが、オプションの購入代金が5万円かかっているのでそれを差し引き利益は45万円となります。

逆に日経225が1500円下がった場合は、SQが権利行使価格の23000円を下回るので、権利は消滅し、オプション購入代金の分の5万円の損となります。

グラフは権利行使価格23000円のコールを50円で買った場合の株価と損益の関係を示したものです。SQが23000円以下の場合、損失は5万円に限定されそれより拡大することはありません。23000円を超えると損失は減り始め、23050円でプラスに転じ、以降はSQが1円高くなるごとに利益が千円の割合で無限に増えていきます。

コールの売り手はその逆となり、SQが23000円以下の場合の利益は5万円であり、23000円を超えると利益は減り始め、23050円でマイナスに転じ、以降はSQが1円高くなるごとに損失が千円の割合で無限に拡大していきます。

権利行使価格23000円のプットを50円で買った場合は、SQが22950円より安くなれば安くなるほど利益が無限に拡大し、23000円を上回った場合は損失は5万円となります。

プットの売りの場合は、その逆となります。


2. オプションの価格はどうやって決まるの?

洗濯健子さんはとっても立派な株を持っています。健子さんは株を売りたくはないけど、株価が下がって損をするのもいやだと思っています。そこで健子さんは行使価格23000円のプットオプションを50円で買うことにしました。その後株価は下落して20000円になりましたが、買っておいたオプションで3000円を受け取ることができました。

これをグラフで書くと、こうなります。健子さんは50円でオプションを買って3000円を受け取ったので、オプションで2950円の利益を得ました。

健子さんは、50円を支払って保険を購入したようなものだと言うことができます。オプションを買うことは保険を買うようなものであり、そのためオプションの価格は、英語で保険料の意味である、プレミアムと呼ばれます。

プレミアムは本源的価値と時間的価値のふたつの要素に分けることができます。

本源的価値は、オプションの権利行使を行った時に得られる価値のことです。

コールオプションの本源的価値と株価の関係をグラフにするとこのようになります。株価が権利行使価格をうわまわるとうわまわるほど本源的価値が大きくなっていきます。なお、コールでは今の株価が権利行使価格をうわまわっている状態をインザマネー、今の株価と権利行使価格がほぼ同じならアットザマネー、今の株価が権利行使価格より安い場合をアウト・オブ・ザ・マネーと呼びます。オプション取引ではよく使う用語なので、ぜひ覚えてください。

プットオプションでは、株価が権利行使価格をしたまわればしたまわるほど本源的価値が大きくなっていきます。なお、プットでは今の株価が権利行使価格をしたまわっている状態がインザマネー、今の株価が権利行使価格をうわまわっている場合がアウト・オブ・ザ・マネーです。本源的価値は、インザマネーの時の株価と権利行使価格との差と言うこともできます。

また、香港特別行政区基本法によって保証されている住民の権利が侵害されることはないのか、国家、安全関連の事案の終審権を中国がもつことにならないか、中国の情報機関が香港内に設置され住民を直接取り締まるようになるのではないか、といった懸念があり、香港の住民は大きな不安を抱いています。

ちなみにこのグラフを、購入代金50円の分だけ下にずらし、権利行使価格を23000円とすると、選択健子さんの損益のグラフと全く同じになります。

時間的価値は将来の価格変動によって利益が得られるかもしれないという期待に対する価値のことで、時間の経過とともに減っていき、満期日にゼロになります。

選択権子さんの損益のグラフは、権利行使価格23000円のプットオプションを50円で買った場合の、満期日の損益を示しているのですが、権子さんがこのオプションを購入した日の損益のグラフを重ねてみます。

青い矢印で示した部分が本源的価値、赤い矢印で示した部分が時間的価値です。

選択権子さんは満期の24日前に株価がここのときに購入しました。当然この時の損益はゼロです。

日が経つと時間的価値が減っていくので、損益のグラフはこのように少しずつ変化していきます。

そして満期では時間的価値がゼロになり、本源的価値だけが残ります。

時間的価値は、満期までの時間だけで決まるのではありません。ボラティリティ、金利、配当利回りも時間的価値の決定要素です。

ボラティリティは価格変動の大きさのことです。グラフは2020年1月から5月の日経225の値動きですが、2月中旬までは値動きが小さく、その後4月中旬にかけては値動きが非常に大きいことがわかります。前者はボラティリティが小さい、後者はボラティリティが大きい状態です。

オプションの価格は保険料のようなものなので、自動車保険で事故のリスクが高い人の保険料が高いのと同じで、ボラティリティが高い、すなわち投資のリスクが高い状態のときは、オプションの価格は高くなります。

ボラティリティには2種類あり、ひとつは過去の値動きから算出されるヒストリカル・ボラティリティで、もうひとつは、実際にマーケットで取引されているオプションの価格から逆算されるインプライド・ボラティリティです。

インプライド・ボラティリティはマーケット参加者の予想ボラティリティと言うこともできます。または、オプションの買い手がリスクを避けるためなら追加で払ってもいいと思っている金額であり、売り手がリスクを取るためには追加で払ってもらわなくてはならないと考えている金額と言うこともできます。

このグラフはある日のインプライド・ボラティリティと権利行使価格の関係を示したものですが、今の価格より権利行使価格が高いオプションより、権利行使価格が安いオプションのほうが、インプライド・ボラティリティが大きいことがわかります。これは、保有している株式の株価下落リスクを回避するために、多少価格が高くても、プットオプションを買って保険をかけておきたいと考える人が多いことが理由のひとつです。

次にオプションの時間的価値と金利の関係を見てみましょう。原資産を買う場合に、代金をあとで払えば、今払うよりも金利の分だけ得になります。この、買い手が得してしまう分を相殺するため、コールは金利の分だけ高くなります。一方、原資産を売る場合は、代金をあとで受け取ると、今受け取るより金利の分だけ損なので、この、売り手の損を相殺するために、プットは金利の分だけ安くなります。

時間的価値と配当利回りの関係については、原資産を買う場合、購入を先延ばしにすれば、先延ばしにしたあいだにもらえたはずの配当の分だけ損をします。この、買い手の損を相殺するため、コールは配当利回り分だけ安くなります。一方、原資産を売る場合、未来に売れば、売るまでのあいだ配当を受け取れます。この、売り手の得を相殺するためプットは配当利回り分だけ高くなります。

以上、オプションの価格に影響を及ぼす要素と、それぞれによってコールまたはプットの価格がどう動くかをまとめると、このとおりです。

それぞれの要素が1単位動くとオプション価格などがどれくらい変化するはずであるかは計算で算出することができ、それらのうち主要なものが4つあり、証券会社の取引ツールなどで簡単にリアルタイムで確認することができます。

そのうちの、デルタは、日経225の値動きにより、オプション価格がどのくらい動くかを示す指標です。例えばデルタが0.3なら、日経225が100円上昇すればオプション価格は30円ほど上昇すると予想できます。

プットのデルタは常にマイナス1から0の間であり、コールのデルタは常に0から1の間の値をとります。アウト・オブ・ザ・マネーのオプションは値動きが小さく、デルタは0に近くなります。逆にインザマネーのオプションは先物とあまり変わらなくなるので、デルタはプットではマイナス1、コールでは1に近づきます。

ガンマは、日経225の値動きによってデルタがどう変化するかを示す指標です。例えばガンマが、1万ブンのニの場合、日経225が100円上昇すればデルタは0.02ほど大きくなります。ガンマは常にプラスの値をとり、アットザマネー、すなわち今の株価に近い権利行使価格のオプションで最大となります。

ベガは、ボラティリティが変化するとオプション価格がどれだけ変化するかを示す指標です。例えばベガが7の場合、マーケット参加者が今後値動きが激しくなると予想しボラテリティイが1%上がると、オプション価格は7円ほど上昇します。ベガは常に正の値をとり、アットザマネーで最大となります。また、満期まで日数があるほど大きくなります。

オプションの時間的価値は時間が経つと減っていきますが、シータは、1日経過するごとにオプション価格がどのくらい減るかを示す指標です。例えばシータが8のオプションは、原資産の価格やボラティリティに変化がなければ、3日後には24円安くなると予想されます。時間的価値は満期に向かって減り続けるので、シータは常にマイナスとなります。

以上、日経225オプションの基本的な仕組みと価格の決まり方についてご説明しました。後編では具体的な投資方法について解説しますので、ぜひそちらもあわせてご覧ください。

 

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