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大混乱の予感の米大統領選 トランプ氏負けて勝つ!?〜コーヒーブレイクしながらわかる

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両陣営の支持率の動向

まず、両大統領候補の支持率の推移をみておきましょう。

ムチャクチャだったとも言われる第一回大統領候補討論会のあと、両候補の支持率の差はやや拡大し、トランプ大統領のコロナウイルス感染報道のあと、バイデン氏が支持率をはっきりと伸ばし、トランプ氏が支持率を落としたので、9月中旬には6ポイント程度であった支持率の差は約10ポイントに拡大しました。

グラフは、一般選挙まで2ヶ月間の、今回と2016年の、民主党候補者の支持率から共和党候補者の支持率を引いたポイント数を示しています。前回の選挙では、事前の世論調査で一貫してリードしていたヒラリー氏が敗北したので、今回も結果は最後までわからないと言われていますが、前回の支持率の差は、最も拡大したときでも7ポイント程度であり、今回の差は前回に比べて逆転の可能性がほとんどないと言えるほどに大きい、と言えるでしょう

アメリカ全土での支持率はバイデン氏が大きくリードしているのですが、大統領選挙では、各州に人口にしたがって割り振られた選挙人を、各州での勝者が総取りして競う形がとられるので、各州での状況をみることが重要となります。

現在のところ、バイデン氏が優勢の州を青で、トランプ氏が優勢な州を赤、僅差となっている激戦州を緑で示すとこのようになります。

獲得見込みの選挙人の数です。上は8月29日時点のもの、下は10月11日時点のものですが、このひとつき半の間に激戦州からバイデン氏優勢に変わった州があり、バイデン氏が激戦州を除いても過半数に迫る勢いとなっているのがわかります。

2016年の選挙で得票率の差が10ポイント以内だった激戦州は18州あり、それらの州での選挙人の多数をトランプ氏が 獲得したことがトランプ氏勝利の大きな要因となりました。しかし、前回ヒラリー氏が勝利した州で、 現在の支持率がトランプ氏が上回っている州はひとつもなく、逆に前回トランプ氏が勝利した州で、現時点でバイデン氏の支持率が上回っている州は8州もあります。

この支持率どおりの選挙結果になるとすると、今回はこれらの州での選挙人の多数をバイデン氏が獲得することになります。

このように、2020年アメリカ大統領選は、バイデン氏が多数を獲得する可能性がかなり高いと言うべき状態となっています。


郵便投票問題

しかしながら、バイデン氏が多数の投票を獲得しても、大統領に就任できない可能性もあるのではないかとの観測があります。

トランプ大統領は、郵便による投票は不正の温床であるとし、「このいかさまは連邦最高裁判所に持ち込まれることになるだろう」としています。

アメリカは移民が多い国であり、トランプ大統領は移民に寛容ではないため、投票率が上がるとバイデン氏に有利となる可能性があります。このためトランプ大統領は、投票率上昇につながる郵便投票を敵視している、とみられています。

郵便投票ではバイデン票、投票所での投票ではトランプ票が多いとすれば、郵便投票の開票は投票所での投票の開票より遅くなるので、トランプ陣営は、投票所での投票で多数を獲得した時点で勝利宣言をし、郵便投票の開票を打ち切ってしまおうとしているとの見方もあります。その場合、バイデン陣営は訴訟を起こすでしょうから、トランプ大統領の「連邦最高裁判所に持ち込まれることになるだろう」という言葉の意味は、この流れを念頭に置いての発言なのかもしれません。

なお、連邦最高裁判所の判事の構成は、もともとは、共和党の考えに近い保守派が5人、民主党の考えに近いリベラル派が4人でしたが、リベラル派のギンズバーグ氏が亡くなり、その後任としてトランプ大統領は保守派の判事を指名しました。この指名が上院で承認されれば保守派が6人、リベラル派が3人となります。民主党は、新しい判事は新大統領が指名すべきと主張したのですが、トランプ大統領がそれを無視して判事の指名を強行したのは、郵便投票の訴訟で自分に有利な判決がでるようにするためだとも言われています。

なお、いずれの候補も過半数の選挙人を得られない場合は、下院で決選投票が行われます。この場合、各州の下院議員選出人数に関わらず各州が1票を持ち、合計で50票となります。


一般選挙後のシナリオ

郵便投票をめぐる訴訟が提訴された場合、どうなるでしょうか。

アメリカの大統領選は、形式的には国民が直接大統領を選ぶのではなく、あらかじめどの大統領候補に投票するかを表明している選挙人団を選ぶという形がとられており、選挙人団を選ぶ一般選挙が11月3日に行われます。

そして12月14ニチに、一般選挙で選出された選挙人が、あらかじめ表明した大統領候補に投票する選挙が行われます。

訴訟となった場合でも、12月14日までに判決が出されれば、予定どおり選挙人による選挙が実施できるので、大きな混乱を避けることができます。このため、連邦最高裁判所が郵便投票の一部を集計しない選挙結果を認める可能性は決して低くないと言えます。

判決が間に合わないなどして大統領が確定しない場合は、憲法に選挙人による選挙で過半数に達した者がいない場合は下院が大統領を選出する規定されているので、下院で決選投票が行われることになると考えられます。

この場合、各州の下院議員の選出人数に関わらず、各州が1票を持ち合計で50票となります。

現在下院の多数党は民主党であり、11月の改選後も民主党がそのまま多数を維持すると予想されますが、州ごとにみると、共和党議席のほうが多い州が過半数となる見込みなので、トランプ氏が大統領に選出される可能性が非常に高い、ということになります。

もし、下院で得票が同数となった場合は、大統領が欠員となってしまうので、副大統領が大統領に就任することになりますが、憲法が副大統領は上院で選ぶと規定しているので、上院での投票で大統領が選出されることになります。

この場合、11月3日の改選により民主党が上院の多数党をとなれば、民主党副大統領候補のハリス氏が大統領に就任することになります。一方で共和党が多数を維持すれば、共和党副大統領候補のペンス氏が大統領となります。民主・共和両党の議席が同じとなった場合は、上院議長が決定票を投じることになりますが、上院議長は副大統領が兼務しているので、現職の副大統領でもあるペンス次期副大統領候補が大統領に就任することになります。


Some clues...

省略(動画本編でご覧ください)

 

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