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トランプ大統領弾劾裁判

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1. ウクライナ疑惑って何?

トランプ大統領は、いわゆるウクライナ疑惑により弾劾裁判にかけられることになったのですが、ウクライナはもともとソビエト連邦の構成国で、1991年のソ連、崩壊に伴い独立した国です。2014年、親ロシア派だったヤヌコーヴィッチ政権が倒れ、敵となったロシアはウクライナの一部であるクリミアを併合し、また親ロシア武装勢力を支援しました。この戦いでの死者は1万3千人にものぼりました。

この年の6月、親欧米的なポロシェンコ政権が誕生します。それ以降、ウクライナとロシアとは常に緊張状態にあります。ウクライナを西側に引き止めロシアに取られたくないアメリカはウクライナに巨額の軍事支援を行ない、その金額は1000億円を大きく超えています。

さて、2019年7月25日、トランプ大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行いました。トランプ大統領はこの会談で、オバマ政権時代の副大統領で2020年大統領選挙で民主党から立候補を目指すジョー・バイデン氏とその息子のハンター・バイデン氏のウクライナでの活動の犯罪捜査を強化するよう圧力をかけました。これがウクライナへの軍事支援を進めているタイミングだったことから、

アメリカの安全保障の問題を、政敵への妨害という私的な利益のために使った職権乱用との疑いで弾劾裁判が行われることになったのです。なおゼレンスキー大統領はこのとき軍事支援を背景とした圧力は感じなかったとコメントしています。

トランプ大統領が捜査を要求したというバイデン親子の活動とはなんでしょうか。

ジョー・バイデン氏の次男のハンター・バイデン氏は2014年から2019年まで、ウクライナの天然ガス会社であるブリスマ社の取締役についていました。このブリスマ社を創設した人物は親ロシアだったヤヌコーヴィッチ政権で環境天然資源大臣を勤めましたが、自分の会社の監督官庁の大臣として数々の不正を行なったと疑われる人物です。

ヤヌコーヴィッチ政権が倒れ親米的なポロシェンコ政権が誕生すると、ポロシェンコ政権への影響力を期待して、アメリカの副大統領の息子、ハンター・バイデン氏を、ガス事業については全くの素人であるにも関わらず高額の報酬で取締役に迎えたのです。

そして2016年3月、ポロシェンコ大統領が当時の検事総長ショーキン氏を解任しました。この解任の背後でバイデン副大統領がポロシェンコ大統領に対しショーキン検事総長を解任しなければ軍事支援をしないと圧力をかけています。

圧力をかけた理由は、ショーキン検事総長が汚職の撲滅に消極的だったからですが、トランプ大統領は、検事総長が不正が疑われるブリスマ社の取締役全員の捜査に乗り出そうとしていたので、それを止めるためだったと疑っています。そのため、バイデン親子がブリスマ社にどう絡んだか、改めて捜査をするようゼレンスキー大統領に対して求めたのです。

2. アメリカの弾劾裁判って?

トランプ大統領の弾劾裁判がどう進んだかを見る前に、アメリカの弾劾裁判の仕組みについて見ておきましょう。弾劾裁判についてはアメリカ合衆国憲法に規定があり、大統領、副大統領などは叛逆罪、収賄、重犯罪、軽犯罪で有罪判決が出れば解任される、とされています。

同じく憲法は、下院が弾劾の権限を専有すると規定しています、また、上院が全ての弾劾の審判をする権限を専有するとし、大統領が審判される場合は最高裁判所長官が議長となり、出席議員の3分の2の賛成で弾劾されるとしています。規定にあいまいなところがありますが、これら条項により下院がまず罪状の調査を行って上院に対して起訴し、起訴を受けて上院が裁判を行う、という流れでなされることになっています。

いってみれば下院が検察で上院が裁判所であり、最高裁判所長官が裁判長、上院議員が陪審員ということになります。議決は、下院では通常どおり過半数によって行われますが、上院については、憲法ではっきり規定されていますので大統領の罷免のためには3分の2の賛成が必要となります。

憲法は弾劾裁判の手続き等について細かく規定していないので大統領に対する初の弾劾裁判である1868年のジョンソン大統領の裁判のときの手続きがその後も踏襲されてきています。なお、2回目の弾劾裁判は1998年の「不適切な関係」が発端となったクリントン大統領に対するもので1回目も2回目も上院での採決で罷免賛成票が3分の2に満たず大統領の解任はなされませんでした。今回のトランプ大統領の弾劾裁判はアメリカの歴史上3回目ということになります。

なお、1974年にウォーターゲート事件に関連してニクソン大統領が訴追されかけましたが、下院本会議での採決の前に辞任したので上院での審判は行われませんでした


3. トランプ大統領弾劾裁判の流れ

それでは、トランプ大統領の弾劾裁判の流れを見ていきましょう。

2019年9月24日、民主党幹部でもある下院のペロシ議長が弾劾調査の開始を発表しました。

トランプ大統領は電話会談の記録を公表したうえで、捜査を促す発言はしたが軍事支援に絡めた圧力はなかったと容疑を否定し、また、弾劾のための調査には一切協力しないと表明しました。

2019年12月、民主党は、トランプ大統領が個人的利益のために大統領権限を利用し国の安全保障や国益を損なったという職権乱用と、下院の調査に対して抵抗し妨害しようとしたという議会妨害を理由として弾劾訴追状を作成し、18日、下院本会議の議決が行われ、職権乱用については賛成230、反対197、議会妨害については賛成229、反対198で可決されました。

そして年が明けた2020年1月、上院での弾劾裁判が行われます。民主党が過半数を占める下院とは違い上院ではトランプ大統領の共和党が過半数議席を握り、そのうえ有罪判決には3分の2の賛成が必要なので事前に無罪となるのは確実と見られていました。

2020年2月5日に行われた採決では、職権乱用については有罪48、無罪52、議会妨害については有罪47、無罪53で、これによりトランプ大統領の無罪が確定しました。


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省略(動画本編でご覧ください)

 

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