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アメリカ大統領選挙の仕組み

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1. アメリカの大統領になれる人

最初にアメリカの大統領になれる資格を確認しておきましょう。

アメリカの大統領になれるのは憲法で、出生によるアメリカ国民であり、35歳以上で、アメリカ国内に14年以上住んでいる人と規定されています。出生によるアメリカ国民とは、アメリカで生まれたか、両親がいずれもアメリカ国民である人のことをいいます。


2. 各党の大統領候補の選出まで

アメリカの大統領選挙は4年に一度、ちょうど夏のオリンピックが開催される年に行われます。

大統領選挙戦は候補者が出馬表明をしてから大統領が選出されるまで1年以上の長期にわたることから、よくマラソンに例えられます。

ではまず前半戦についてみていきます。アメリカは二大政党制がしっかりと根付いている国ですので、前半戦は民主党と共和党の党員がそれぞれの大統領候補を決めるためのプロセスということができます。

Step1:党員が代議員を選ぶ

夏に開催される民主党・共和党それぞれの全国大会で各党の大統領候補が選出されるのですが、全国大会には各州の党員を代表して代議員が出席し大統領候補の選出を行います。この代議員を一般党員が選ぶ過程が大統領選の4段あるステップのうちの1段目です。

党員は特定の立候補者を支持することを表明している代議員を選びます。代議員の数は民主党、共和党ともに数千人で、それが人口の規模に応じて各州に割り振られます。

選ぶ方法には予備選挙と党員集会の2種類があります。予備選挙は代議員を投票によって選ぶ方式です。毎回全米でもっとも早く予備選挙を実施するのはニューハンプシャー州で、2020年の実施日は2月11日です。

党員集会は投票ではなく話し合いによって代議員を選ぶ方法で、州や政党により、やりかたが異なりますが、全米でもっとも早く党員集会を開くアイオワ州の民主党党員集会では、党員が学校や図書館、教会など公共の場所に集まり、議論をし、支持する候補者ごとにグループをつくって、それを繰り返して候補者ごとの、代議員の数を決めています。

予備選挙と党員集会のどちらを実施するかは州により異なりますが、党員集会は議論に時間がかかり、一部の人しか参加できないことなどから実施する州が減っており、2020年に実施するのは4州のみとなっています。

毎回3月初旬の火曜日に、多数の州で一斉に代議員の選出が行われます。この日に政党の大統領候補がかなり絞り込まれることから、非常に注目される日ということでスーパーチュースデーと呼ばれます。2020年については3月3日がスーパーチュースデーで、民主党全代議員の4割近くがこの日に決まります。

Step2:代議員が党の大統領候補を選ぶ

大統領選の年の夏に開催される党の全国大会に各州で選出された代議員が集まり、投票によって党の大統領候補を決定します。2020年については、民主党は7月13日から16日、共和党は8月24日から27日に全国大会を開催します。


3. 各党の候補決定後、大統領就任まで

次に後半戦についてみていきましょう。

Step3:国民が選挙人を選ぶ

大統領候補に、選出された人は副大統領候補を指名します。そして二人で、タッグを組んで、アメリカじゅうを遊説してまわったり、テレビに出演したり、テレビCMを流したりして国民の支持を集めます。候補者が直接対決するテレビ討論も行われます。ときに激しい議論もなされ、2016年のトランプ、氏とヒラリー・クリントン氏によるテレビ討論では抽象と非難に終始したことが話題となりました。

そして11月の最初の月曜日の翌日の火曜日に一般選挙が行われます。一般選挙では、あらかじめどの大統領候補に投票するかを表明している選挙人団を選ぶという形がとられています。

選挙人の総数は、上院議員の定数100人と下院議員の定数435人に連邦議員を選出しない首都ワシントンDCの分として3人を加えた538人です。これが各州に人口にしたがって割り振られます。一番配分が多いのはカルフォルニアの55人です。

選挙人の選出は、ネブラスカとメーンをのぞく全ての州で勝者独占方式で行われます。つまりもしカルフォルニア州で民主党の得票が共和党をわずかにでも上回った場合、カルフォルニアの選挙人55人が全て民主党で独占されることになるのです。

勝者独占方式には、国民から過半数の票を得たにもかかわらず、獲得した選挙人の数が半分を下回り、落選する事態が発生する可能性があるという問題があります。実際に初回の1789年から2016年に行われた大統領選挙58回のうち5回でこのような逆転が生じており、2016年にはヒラリー・クリントン氏が得票数でトランプ氏を200万票以上も上回ったにも関わらず敗北しました。

なお、アメリカの大統領選挙には、この勝者独占方式の問題の他にも一票の格差の問題もあります。選挙人ひとりあたりの人口は最大のカルフォルニアで68万人、最小の、ワイオミングで19万人で、一票の格差は3.6倍もあります。

このような格差が生じる理由は、人口の多い少ないに関わらず、各州に上院議員が2名割り振られているためです。勝者独占方式も一票の格差の原因である、各州に同数の上院議員を割り振る制度も、州の地位を重視する考え方が基本にあります。各州の地位が重視されるのは、建国時にアメリカが独立国のような13の州の連合体だったからです。

ちなみに選挙人制度という、わざわざ複雑な、仕組みを採用しているのは、テレビやラジオもなく国民が大統領候補の主張を知ることができなかった時代に地元の知識人に大統領の選挙を任せたことの名残です。200年以上前の状況に合わせて作られた仕組みをそのまま使い続けているのがアメリカ大統領選挙なのです。

Step4:選挙人が大統領を選ぶ

12月の第2水曜日よりあとの月曜日に州ごとに一般選挙で選出された選挙人が州都に集まって大統領の選挙を行います。この選挙で選挙人総数538の過半数の270票を得た候補が大統領に選出されるのですが、各選挙人はまず間違いなくあらかじめ表明した候補に投票するので、11月の選挙の時点で結果はわかっており、この12月の選挙は形式的なものです。

なお、いずれの候補も過半数の選挙人を得られなかった場合は下院で決選投票が行われます。この場合、各州の下院議員選出人数に関わらず各州1票を持ち、合計で50票となります。

そして翌年1月20日の就任式で、次の4年間の大統領が正式に誕生するのです。


Some clues...

省略(動画本編でご覧ください)

 

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