あらすじ

あらすじ

第一部
一九三一年に上海に渡り銀相場で財を成し、上海・天津で通貨間裁定取引を行う柳場賢。不良邦人だがかつて大蔵省一のエコノミストと言われた男だ。柳場は、彼の退官の理由をつくった駐上海英国財務官のE.ホール=パッチが中国の幣制改革を成功させたと聞き、日本軍が北京に設立した中央銀行発行の聯銀券を使い、中国幣制改革により生まれた通貨、法幣の駆逐に乗り出す。

北京財務官事務所嘱託として大蔵省の後輩、愛田健一らと為替管理政策や貿易専門発券銀行設立などを進めたが、法幣の優位は変わらない。日本の統治外にある天津租界で法幣が使われ続け、発行準備が不十分な聯銀券に外貨交換性がないためだ。柳場らは軍による天津租界封鎖に便乗し、法幣の租界内流通禁止と租界からの銀搬出を目指す。その折、天津租界が洪水に覆われた……

第二部
上海で柳場は、ホール=パッチと重慶国民政府財政顧問の米国人A.N.ヤングに、エコノミストの力で戦争終結を早めようと誘われる。既に月十%の上海のインフレを二十%に高めればハイパーインフレが起き、社会は大混乱に陥り戦争は終わる。日本は戦争に負けるが戦争終結までに味わう日本国民の苦しみを短くすべき、と言うのだ。柳場は動き出した。

柳場は、物資調達に走る軍の力を利用し、巧妙な仕組みで占領地のインフレ率を上げてゆく。さらに占領地のインフレの日本への波及を目指すが、日本経済を護らんとする愛田は、柳場の意図に気づいてはいないものの、それを妨害しようとする。愛田は柳場を不審に思い憲兵隊に接触、憲兵隊は反抗日テロ組織特工総部に調査を依頼する。柳場にスパイ嫌疑がかかった。特工総部は柳場暗殺を企てる……

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近代外交経済小説の表題作および『ステーツマン』『上海ノース・ステーション』の三篇を収録

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