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本ページでは他サイト等に掲載された大薗治夫の過去の著作物を再掲しています。

シャングリ・ラへ

シーサンバンナの家

シーサンパンナ

昆明から南西へ飛びシーサンバンナの空港に到着すると、タイ族の民族衣装をまとった小姐ガイド達が出迎えてくれ異国情緒を盛り上げてくれる…のだが、我々のガイドは漢族の小姐である。上海で旅行をアンパイする際、各地で日本語のできるガイドを付けてくれるよう頼んだのだが、シーサンバンナ及び中甸においては日本語ガイドは用意できないとのことであった。そこで英語でも構わないと言ってみたが「シーサンバンナの小数民族はやっと北京語をしゃべれるようになったところで、外国語などとてもとても」とのことであった。ここシーサンバンナで実際に我々に付いたガイドはやはり英語も日本語もできないのだが、北京語については大変聞き易い。ということは「外国語は無理だけど北京語のうまいガイド」を付けてくれたのかもしれない。しかし私としては、北京語が少しくらい聞きづらくても身体にピッタリした民族衣装を着たタイ族のガイドの方がよかった。各観光ポイントで団体旅行者を引き連れた美人タイ族ガイドを見かけるのだが、その度に私は羨望のまなざしを向けてしまうのであった。

集落

シーサンバンナでの観光は、どこへ行くにも車窓が楽しい。中国の最南端であり、南国情緒たっぷりである。町には椰子の木が茂り、郊外は中国の他の地域では見られない緑の豊かさだ。時折タイ族の部落があり、派手なピンクの服を着た娘達(といっても実はオバサンがほとんどなのだが)が路上で果物を売っている。少年は皆僧の修行をするそうで、オレンジ色の僧侶の格好をした少年が自転車で行き来する(シーサンバンナは今回の旅行のメインの目的ではないので、各観光地についての説明は省略させていただく)。

途中、寺や民家にも立ち寄ってみた。二軒の民家に寄ったが、一軒は中に入ると装飾品等を売っていた。観光用でもあるらしい。もう一軒は運転手の知人の家である。1階で手工業程度の規模のソバ工場を営んでいる。居住する2階はかなりの広さがあり、ダイニング・キッチン兼リビングで50㎡程度である。テレビも冷蔵庫もオーディオもある。外から見るとかなりのボロ屋ではあるが、中に入ればかなりの生活水準だ。聞けば彼は部落の中でも有数の金持ちということである。結局のところ、訪れた二軒とも標準的な家庭ではなかったのだ。

少年僧

夕食まで時間があり、「さてどこへ観光に行こうか」と考えていると、運転手から自分の家に遊びに来いとオファーを受けた。恐縮したものの、他にすることもないのでおじゃまする。

家はアパートメント形式なのだが、いわゆるメゾネットタイプで1階がダイニングキッチンとワンベッドルーム、2階はリビングとツーベッドルームである。150平米とのことだ。22万元で購入、12万元で内装をし、5万元で家具・家電を揃えたと言う。合計日本円で500万円くらいか。奥さんも病院に勤務しているとのことだが、普通の仕事をしている夫婦ではこれほどの家は到底手に入らない。運転手という仕事がいかに儲かるかである。家の中だけでなく庭までも隈なく説明する彼は実にうれしそうである。フルーツやジュースなどをご馳走になりながら彼の成功物語りをたっぷり聞いた後 "豪邸" を後にする。

ツアーと食事

植物園

旅行で3日間も中華を食べ続けると通常はいい加減飽きてくるのだが、今回は例外のようだ。それまでの食事は毎回かなりの量を残したのだが、3日目の夕食にして初めて出されたものを全部食べた。それまでの食事は全くうまくなく、初めてまともな食事にありついたような気がした。それにしても旅行社にアンパイさせた旅行の食事はいつもよくない。仕事で旅行する時にはうまいものを食べられるので、「地方の食事はまずい」ということではないのは明かだ。もちろん仕事で旅行する時は、毎回受け入れてくれる相手がおり、そこが通常その地域で最もうまい店に連れて行ってくれる。よって遊びの旅行の食事で仕事の時のそれと同じものを期待できないのはやむを得ないと思うが、それにしても差が大きすぎる。そういえばこれまでの、朝食を除く食事のうち昼飯のまずさが際立っているように思うがどうしたことなのか。

マーケット

昼は毎回観光地のそばのレストランで食べることとなるのだが、こういうところは味ではなく旅行社とのコネで客をよんでいるのだろう。旅行社及びツアーコンダクターに対してキックバックが払われているに違いない。こういう店にはたいてい粗悪な土産を売る店が併設されており、旅行社、レストラン、土産物屋の三者が結託して旅行者から金を絞りとる仕組みが作られている。夕食については、やはりレストランとツアーコンダクターとの癒着のニオイもするものの、町中のレストランについては旅行者だけが客ではないのでまあまあの水準となるのだろう。

それから、旅行社が食事に配分する金額が小さいのだろう。ある日の食事では、自分の食べている料理の値段が店のガラスに貼ってあったのだが、たったの28元であった。ツアー料金がドンブリ勘定であれば、コストを削れるところは削ってしまおうとう気持ちになるのもやむを得ないかもしれない。一番削り易いのが食費なのだ。今回旅行の見積もり段階で、食事に費用をいくらかけるのかを明記させておけばよかった。そうすれば毎日うまいものを食べれたかもしれない。

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